2009年08月28日

太陽と向日葵

長いです。しかもアリすずじゃないです。
片想いです。

それでもいいという方だけ、どうぞ。







貴方はまるで大輪の花のようだ

貴方はまるで炎のようだ

貴方はまるで太陽のようだ



私はまるで――――







「アリサちゃんの髪は綺麗やね」



と、小さな手があたしの髪を触りながら言ってきた。
場所は教室。間違いない。赤い夕陽が出てるから少し眩しく感じる。
それで、はやてが日誌を書いている。これも間違いない。
なのに――。


「いきなり何言い出すのよ。さっさと書いちゃいなさいよ」


そう。いきなりあんな事を言い出す理由が分からない。
別に褒められるのはいいけど、急に言われるのは、ちょっと・・・。
いや、そんなことよりもあんな顔で言ってくるから――。

「ほんまのことを言うただけやで。夕陽の赤い色がアリサちゃんの向日葵色の髪に反射して綺麗な炎みたいに、それでより一層白い肌が映えてるんや。・・・・その白い肌も赤くなってもうてるけどな。夕陽のせいかどうかは知らんけど」

さらり、とあたしの髪を撫でる。撫でるというより、そぉっとガラス細工にでも触れるような丁寧な触れ方だった。・・・・どこか縋るような感じもした。


「・・・・・夕陽のせいよ」


恥ずかしくて赤くなったのを分かっていたが、それを指摘しながらからかってくるから、夕日のせいにしておいた。
それを知っていながらも笑っている。・・・・普段とは違う、笑い方だった。
はやては声を上げながら笑うことが多い。よく悪戯をするからだと思うけど。でも今の笑い方は、すずかみたいだった。
歯を見せず手を口元までもっていきくすくすと笑っている。
それだけだ。たったそれだけで――遠く感じた。



「そんなことより! 何であんな事言ったのよ」
「あんな事? あぁ、さっきも言うたやろ。」
「あーもぅ!そうじゃなくて、なんで泣きそうな顔で言ったのよ」



初めに髪を触ったとき見間違いかと思った。夕陽のせいじゃないかとも思った。
でも、違った。二度目の時に分かった。まるで迷子の子が親を見つけたときのような、感じだった。


「そ・・・・んな顔、しとった?」


細めていた目が大きく見開いた。今度は困ったように指で頬を掻いた。


「してた」
「ぁー、堪忍な。別に・・・・」




「言いなさい」




有無を言わさないように言ったつもりだ。案の定目を大きく見開いて固まった。
“ほんと、こいつらは・・・・・”と、心の中で言った。


「別にあんたが言いたくないなら別に言わなくてもいいわ。言いたくないこともあるし、その人の想いを尊重したいわ。でも・・・・」


一息ついた。息を吸う。


「泣きそうな顔をして無理矢理自分の心を閉ざしてるのは見て置けない。ましてや、大切な親友なら尚更ね」


真剣な顔。透き通った声。どこか優しさがでている。
そうだ。この人はいつもそうだ。私たちが何か悩んでるとすぐに見抜き、一緒に悩んでくれる。
踏み入れてはいけない事だと分かれば、ちゃんと引いて見守ってくれる。
アリサちゃんは鋭いから、この“想い”が気づくんじゃないかと恐れたこともある。
それでも、“想い”は溢れるばかりだった。決壊寸前のダムのように。
いっそ溢れてしまえばいいか、とも思った。
でも気づかれてはいけない。――絶対に。




けど、本当に一度だけ言えるのなら。言うことを許されるのなら。これからもずっと親友だと思ってくれるなら。







――私は、






「ただ、な・・・・・・。アリサちゃんが太陽やと思ったんや。そんで、私は向日葵や」




顔を伏せる。鼓動が速い。心臓が煩い。落ち着け、これからだ。
言っていいのか。大丈夫だろうか。反対の想いがぶつかり合いながら、深呼吸をして顔を上げる。綺麗な顔がこっちを見てる。純粋な眼差しを向けてくるから、決心が揺らいだ。




「こんな話があんねん」




決めた。






ヒマワリは昔は女(ひと)だった

その女は太陽に恋をした

大好きで振り向いて欲しくて

女はいつも空を見上げてた

何日も何日も飲まず食わずで

そうしているうちに

その女は

太陽によく似た花になった

どの花よりも背は高く

誰よりも傍に

いつも目で追って自分はここだと

叫んでた

でも太陽は振り向かない

だから秋になると泣く

ポロポロ ポロポロ

大粒の種(なみだ)を流して

今年も気づいてもらえなかった

来年こそは きっと

そう願いを 託しながら






ふう、と息を吐く。言った。言ってしまった。
アリサちゃんは分かっただろう。話す前に言ってるからわかるだろう。
誰と誰の話かを。
不思議と後悔はない。それは諦めてるからか、それともアリサちゃんが絶対受け止めてくれるから、と思ってしまってるからか、分からない。





「・・・・・・あたしは、」




そこで途切れた。見ると少し顔が伏せてしまっている。
この子には真っ直ぐ向いてほしいのに伏せてしまうぐらいなら言わなければよかった、と後悔はした。
そんな矛盾の考えをしてる自分に苦笑した。




「そんな大層な存在じゃないわ。あたしは誰かが泣いていたりするのを無視できないだけ。いわば、お節介よ」
「そんなことあらへんよ。現に私は十分助けてもろてる。勿論すずかちゃんたちもそう思てるはずやで」
「だったらいいけど、お節介だと思ってる人もいると思う。・・・・・あと、あたしは“太陽”であんたは“向日葵”だっけ?」
「へ?・・・ああ、うん」



温かいものに包まれた。ペンを握っていた右手がアリサちゃんの両手で包まれていた。



「あ、アリサちゃん?」
「こんなこと“太陽”だったらできないでしょ?」
「・・・・・・え?」


いつもとの勝気な笑みではなく、子どもが楽しい玩具をみつけたような無邪気な笑み。


「あたしはね、はやて。ただ一緒に笑いたいだけよ。皆と一緒に買い物したり、ゲームでもしたり、カラオケに行ったり」



「ただ、皆と一緒にいたいのよ」


ささやかな願いだったのだ。だれでも願う、そんな願い事だった。


――ああ、なんて勘違いをしていたんやろか

アリサちゃんは常に自分たちの傍におったのに

それを私が勝手に――



「だから、さ・・・・。あた、しは皆と、一緒に・・・・・・っ!」



ぎゅぅ、と握る力が強くなった。
嗚咽が聞こえてきた。
ポロポロ ポロポロ
大粒の涙が綺麗な翡翠の瞳から零れてる。
綺麗だった。
優しい、と純粋だ、と思った。



「うん、うん。堪忍な、アリサちゃん」


髪に触れる。
今度は小さな子をあやすように。


「あや、っま、らない・・・・でっ! あたし、は・・・っ」
「アリサちゃんは優しいからな、私を傷つかへんように考えてるんやろ?」
「・・・・・・・っ!」
「ええんよ、私が勝手に言っただけやから。だから」
「駄目に、決まってる、っでしょ・・・!」


嬉しかった、この気持ちを恐がらないで。
悔しかった、アリサちゃんを泣かせてしまった自分を。
こんな気持ちを持った私をアリサちゃんは、一生懸命傷つけないように、自分が泣きながら考えてる。
それだけで、本当に嬉しかった。
泣きたかった。
けど泣かない。泣いたらもっと泣いてしまうだろう。
もっとこの子が泣いてしまうだろう。


「誰かっ、を、好きになる、のは素敵な・・・こ、とだからっ!それが、誰であっても」


涙を零し、嗚咽を交えながらしっかりと私の目を見据えながら言ってきた。


「誇りなさい。その気持ちを。誰かに蔑まされても。誰かを好きになるのは、許されることよ」


ポロポロ
涙が――目が霞む。
泣くな泣くな泣いてはいけない。
誇れ、と言った。
女の子を親友を好きになってしまったこの“想い”を誇れと言ってくれた。


「あたしは絶対・・・・・・っ!」
「ありがとう。ほんまにありがとう、な。今めっちゃ嬉しいんや。こんな気持ちをアリサちゃんは誇れって言ったことが、めっちゃ嬉しいんや」


幸せだ。こんな優しく素敵な親友を持った私は幸せ者や。


「泣かんで? アリサちゃんが誇れって言うてくれたから、私は誇れる。アリサちゃんを好きになってほんまに――よかった。例え、この想いが報われなくても、ずっとずっと」


“・・・・報われなくても”の時に、アリサちゃんの涙がたくさん溢れた。
私の想いは伝えた。伝わった。
すっきりした。
穏やかだった。
もう、恐れるのは何も、ない。




















「あー、真っ暗やな。最近日暮れるん早いわ」
「そうね。でも、まだ暑いのは残りそうね」


あれからどのくらいの時間が経ったのかは分からないが、一生の想い出になるだろう。
いや、アリサちゃんたちと過ごした時間は全て一生の想い出になる。
教室をでてからも手を離さず、ずっと握りながら帰っているこの時間。
これからもこんな時間が続くんかな?と、けどすぐに、いや、と頭を振りながら打ち消した。
だって、私は―――






「頑張りなさいよ」
「え?」
「向こうに行っても。笑って、泣いて、怒って、それで悔いを残さないようにしなさいよ」






唐突に頑張りなさいよ、と。
私の頭の中を読んでるかのようなタイミングだった。
そのタイミングの好さに苦笑して、鼻の奥と目の奥が熱くなってきた。
“さっきも、散々泣いたのに・・・・・”
いつの間にこんなに涙脆くなったんやろか、と思いながらアリサちゃんの顔を見た。
顔はたくさん流した涙のせいで目は真っ赤になり、涙の跡もついていて、お世辞にも綺麗とは言えないが、私にとってはどの女の子よりも綺麗で、笑顔は変わらず、輝いている。






「あたしやすずかは待ってるから。ここで。この地球(ほし)で。辛くなったら帰ってきたらいいわ。勿論、それ以外でも帰ってきなさいよ!」
「ありがとうな、アリサちゃん」






感謝してもしきれない気持ちで帰っていった。
手はまだアリサちゃんの温もりが残っている。
それよりも、体が心がアリサちゃんの温もりで包まれてるようだった。








空を見上げた。










私が生まれた地球がある。家族がいる。親友がいる。好きになることを素敵な事だと。誰を好きなっても誇れ、と教えてくれた大切な人がいる。







――今日は、いい夢が見れそうや――






一番星が輝き始めた。








あとがき
いろいろと視点が変わってしまい、すみません(;´∀`)
本当はアリサ視点でいくはずだったのに・・・っ!
急展開すぎました。

太陽と女の話はちょっと某漫画の話を引用しながら書きました。
ぶたいちょーごめんね。
でも、二人はこんな関係が好きです。
原作でも二人の絡みは無いに等しいですが、そこらへんは、ほら、ね?


posted by 団子 | Comment(0) | SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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